ボサノバシンガー 田坂香良子 -KAYOKO TASAKA-

コラム

恋するキモチ

私が好きな尾崎亜美さんの30年くらい前の曲にこんな詩があります。
「ダイアルしようかな、ポケットにラッキーコイン、ノートに書いたテレフォンナンバー♪」
今の10代の女の子達には「ダイアル?」「コイン?」「なんでノートに電話番号?」って感じでしょうね。
なんだか時代の流れを感じてしまいます。
でも、気になる彼に「電話しようかな」、っていうあのドキドキ感は今も同じはず・・・・

1人1人が携帯電話を持ったり、瞬時に文章がいろんなところに送れたり、地球の裏側にいる人としゃべれたり、ごく普通に海を越えて旅行したり、暑い夏にすずしい部屋で過ごせたり、暗い夜も明るい電気の中で過ごせたり、と、10年前、100年前、200年前とはまったく違う世の中になっています。
でも、感情の面をみてみると、源氏物語のころから、っていうより人間が生まれたころから、私たちは何も変わってないような気がします。
特に恋愛に関する感情=人を好きになる気持ちとか、相手の気持ちがわからなくてもどかしく感じる気持ちとか・・・
ヒトって実は進化してないのかな?(笑)

そういえば、動物は恋をするのかな?
親子の愛情とか、権力争いとか、嫉妬心とか、そういう本能的なものはどの動物も持っていると思うけど、たとえば、ライオンも失恋してしょんぼりしたりするのかな。
動物にも相性があるから、なんらかの感情はあるんだろうけど、「恋」に限っていえば、どうなんだろう。
「好き」という気持ちをうまく伝えられない象とか、好きな相手が同じ気持ちだってわかって有頂天になっているチンパンジーとか・・・
人間と他の動物を区別するものがあれば、それはそういう感情を豊かに持っているというところかもしれないな、なんて思います。
でも、その人間も、文明や科学のめざましい発達とは裏腹に「感情」だけは大昔も今も変わらない。
そう思いませんか?
だからギリシア神話を読んでも共感できるし、源氏物語も時代を超えて読み継がれていく・・・
不思議ですね。
これから科学が発達してタイムマシーンができたとして、たとえば古代ローマ帝国にタイムスリップしたとしても、きっと恋愛はできるんでしょうね、なんの努力もせずに。

人間しか持っていない感情、そして、大昔から変わらない感情=「恋する気持ち」。
私はこの感情を大事にしたいな、と思います。
せっかく人間に生まれてきたのだから(笑)

冒頭の尾崎亜美さんの歌。最後はこんな詩で終わります。
「あ、気持ちが動いてる。たった今、恋をしそう♪」

(2006.05)