ボサノバシンガー 田坂香良子 -KAYOKO TASAKA-

コラム

言葉と想い

私は話すのが苦手です。ライブのMCも苦手。
いつも想いを伝えるのに四苦八苦。そしてたまにしどろもどろ(笑)

思っていることの半分も言葉にできないもどかしさを、いつも感じています。
でもある日、友達に言われました。
想いって言葉だけで伝わるものじゃないよ、って。
いくら言葉が少なくても、想いがあればそれは必ず通じるし、いくら言葉巧みに話しても想いがなければそれは全然伝わらない。
だから、まず想いを伝えようとする気持ちが大事。
”feel”と”understand”は違うんだよ、と。

想い・・・目に見えない物。
それを、言葉という手段で形にしようとするのですよね。
そして、私は歌で想いを伝える。声で、表情で、体全体で・・・・
日本語の歌なら言葉がそこにあるから、より想いを具体的に伝えられる。
でも、聞いている人がよくわからないポルトガル語でどこまで伝えられるんだろう、といつも思います。

私はいろんな歌を歌うけど、結局伝えたい想いというのはひとつかもしれない。
幸せな気分になって欲しいっていう、それだけかもしれない。
恋の始まりのような、春の日だまりのような、ほんわかとあったかい幸せな気分。
魔法の粉を振りかけるように、花咲じいさんの灰のように、私の歌で聴いてくださった方の心に花が咲くようにと、そういう想いで歌を歌っているような気がします。
とはいえ、言葉はやっぱり想いを伝える一番的確なツール。
おしゃべりが苦手だから、私は今、一生懸命に文章で想いを伝えようとしているのかもしれません。

そういえば、ライブが終わって、お客様に言われたことがあります・・・
「私、なんだか、恋がしたくなっちゃったわ」
きっとこの日は、うまく私の想いが伝わったのですね。

(2005.11)