ボサノバシンガー 田坂香良子 -KAYOKO TASAKA-

コラム

O momento certo

久しぶりに会った友達が、
「私、彼について広島にいくことにしたの。向こうでも歌は歌えるし。東京を離れるのは少し寂しいけど、でも、彼と一緒にいることの方が私には大切だから」
って、話してくれました。
彼女はオリジナルを中心に歌っている歌手で、去年はCDも出しています。
でも、東京で歌手として活動するより、彼と一緒に生活しながら歌うことを選択したのです。

早すぎても遅すぎてもいけない。
ちょうど、この瞬間にやらなければならないこと、ってありますよね。人生には。
跳び箱の踏切台と一緒。
早すぎても遅すぎても上手く飛べない。

この間、師匠のバスコと話していた時、
「人生には”o momento certo”があるんだよ」
って、彼がぽつりとつぶやきました。
日本語に訳すと「正しい瞬間」。
「今!」って時のこと。
禅にも同じような言葉があると聞きましたが、そういう瞬間は洋の東西を問わず感じるものなのですね。
まあ同じ人間なんだからあたりまえですけど。

彼女が広島に行こうと決断した時は、まさしく”o momento certo”なんだと思います。
今、このとき、彼女が一番大事だと思うことを優先して、そしてそれを実行する時。

“o momento certo”
「飛び立つとき」って訳せばいいかな。

あ・・・・もしかしたら、「潮時」とも訳せるかも。
たとえば、宴会の席でちょっと早めに失礼したいと思ったときとか、なんとなくぎくしゃくしてしまった関係を断ちきるとき、とか。
タイミングを逃すとずるずる現状を引きずってしまう・・・だから今、このとき!っていうその瞬間。

まあ、何にしても、「このタイミングを逃したら・・」っていう時がありますよね。
そのときにはいつもより少しだけ勇気を出して、思い切って踏み切ってみたら・・・
きっと、そういうときに、人生の次のステージへ行けるような気がします。

もしかしたら、私がCDを作るのも”o momento certo”かも。
去年でも、来年でもなく、今年の今、このときに・・・

(2005.10)