ボサノバシンガー 田坂香良子 -KAYOKO TASAKA-

コラム

脱皮

蛇とかカニとかは成長していく過程で脱皮します。
私たちの心も、目に見えないけど、成長すると脱皮してそのたびに大きく、キレイになっていくんじゃないかな、と思うのです。
どちらかというと、成長したら、っていうより、汚れがたまったら脱皮するっていうイメージかな。
人生を重ねていくと楽しいことばかりじゃなく、いろんなことがおこります。
悲しい思いや、つらい思い、イヤな思いや、苦しい思いもたまってきて、だんだん心をおおっている膜が重くなってきます。
重くなりすぎて押しつぶされそうになったとき、その膜をやぶって脱皮する。
そうすると中からキレイになって大きくなった心が現れる・・・
それが成長なんじゃないかな。

あるミュージシャンが、「自殺しよう」と思ったまさにその時、たまたまあるお笑い番組がテレビに映っていたそうです。
それを見た彼は、急に、なんだか死ぬ程落ち込んでいる自分がバカみたいに思えて、自殺を思いとどまり、そして、そのときの感情をもとに曲を書いたっていう話を聞きました。
なんとなく、彼はそのとき脱皮したんじゃないかと思います。

殻を破るというか、いままでの皮膚を破る訳だから、脱皮には大きな痛みが伴うはず。
本当のところはカニになってみないとわかんないけど。
でも、痛みがあって、それを乗り越えて初めて前に進んでいける、そんな気がします。
一度脱皮したら、うそのように心が軽くなって、脱ぎ捨てた皮がどんなに汚れていたかわかるんじゃないかな。
まあ結局、少しずつ汚れはたまっていくんだけど、一度死ぬほど心が痛くなったら、なるべく汚れがたまらないように、少しは学習するだろうし。
あるいは、皮が汚れすぎないうちにプチ脱皮を繰り返すかもしれないし・・・。

何にしても、人生、いろんなことがあります。
でも、落ち込むだけ落ち込んだら、何かが心の奥底で劇的に変化する。そしてその瞬間、脱皮できるのだと思います。

痛いけど、がまん、がまん!

(2005.05)