ボサノバシンガー 田坂香良子 -KAYOKO TASAKA-

コラム

2020年最後の日に思うこと

誰一人想像もしなかった大変な一年が今日で終わります。
今までも自然の脅威の中で、人間というのは弱い存在だということは嫌というほどわかっていたはずなのに、今年ほどそれを痛切に思い知った年はなかったと思います。
たくさんの命が奪われ、たくさんの仕事も奪われました。
そしてたくさんの楽しみが奪われました。

私はずっと、共通の敵というものが現れたとき、人は団結するのだと思っていました。
たとえば、宇宙から侵略されたら、世界中は一つになって、この地球上で今行われている戦争はなくなるのだと。
でも、そうじゃなかったことがわかりました。
今回のことで、人はそれぞれ立場の違いで考え方が違い、同じ敵(?)に対して、まったく受け止め方が違い、対処の仕方、方法が違い、一つになって戦ったり、気持ちを一つに持つことが難しいのだということに気付きました。そして結局は自分が信じる道を歩いていくしかないのだということも知りました。

5月にこのコラムに書いた文章を読み返してみて、今もまだ状況が変わっていないどころか悪化している現状。そんな中、今年一年、私が信じて歩いてきた道は私にとっては正しかったと思うし、今も気持ちは変わりません。
時間が経ち、いろんなことを考える時間も有り余るほどあったから(笑)、5月のころよりはもっとこれからのことも考えられるようになりました。そして、いろんなことに心の整理もつきました。

歌詞はいつも人生のバイブルなのですが(笑)、Maria Ritaが歌うNovo Amorという歌にこんな歌詞があります。
“a gente ri, gente chora
e joga fora o que passou
a gente ri, a gente chora
e comemora o novo amor”
(笑い、泣き、過ぎ去ったものは捨ててしまおう。笑い、泣き、新しい愛を祝おう)
カーニバルに例えながら、愛を失ってもまた新しい愛が始まる。ということを歌っているのですが、「何かが終わってもまた何かが始まる。過ぎたことは忘れて明日に目を向けよう」というメッセージを感じます。

私にとって、「ライブ」とは、歌を聴いていただくだけのものではなく、いらして下さったみなさんとおしゃべりして、会話も楽しみ、そしていらしてくださったお客様同士がいろいろお話もして輪が広がっていく、そんな「場」なのだということを、この一年いろいろ考えて思いました。
だから、なんの憂いもなく歌い、そしておしゃべりできる、そんな日が来るまで、しばらくは「ライブ」はお休みすることになりますが、これなら「私のライブ」ができると思ったときには、またみなさんと笑顔でお目にかかりたいと思います。
その日が一日も早く来ることを祈りつつ・・・・

いろんなことがあった2020年。過ぎたことは過ぎたこと。明日から始まる新しい年に向かって、自分の信じる道を引き続き歩いていきたいと思います。

(2020.12)