ボサノバシンガー 田坂香良子 -KAYOKO TASAKA-

コラム

Se todos fossem iguais a voce

感動と興奮のアテネオリンピックも、ついに終わってしまいましたね。
いろんなことがありましたが、私が最後に一番印象的で感動したのは、男子マラソンのブラジル人選手。
トップを走っていたのに、アクシデントに見舞われて銅メダルになった、あの選手です。
さわやかな笑顔でゴールし、直後のインタビューで、
「これは神が自分に与えた試練だと思う。この結果に不満はない。」
というようなことを言っていたのです。
それも、心の底からそう思ってるふうに。

普通だったら(っていうか、私だったら)悔しくて悔しくて、泣き叫んでたと思います。
だって、4年間がんばってきてもう目の前に金メダルがあったのに、まったく関係のない人のせいでチャンスを無くしてしまったのだから。
彼の言葉を聞いて、彼の心の豊かさを感じ、心が温かくなりました。

"Se todos fossem iguais a voce"
「もし、世界中すべての人があなたのようだったら、世界はどんなにすばらしいものになるだろう!」という内容の歌です。
彼のインタビューを聞きながら、ふとこの曲を思い出しました。
これからこの曲を歌う時は、きっとデ・リマ選手のことを思うんだろうなぁ。

ブラジルでは、彼は英雄になりました。
そして、ビーチバレーで金メダルをとった選手が、彼に金メダルを譲りたいと言っているとのこと。
やっぱり私の大好きなブラジルはすばらしい!

試練を与えた神様は、彼と周りの人たちすべてに金メダルよりも価値のある大きなプレゼントをしたのですね。きっと。