ボサノバシンガー 田坂香良子 -KAYOKO TASAKA-

コラム

握手

「こころというものは、指のさきまで通っているものです。ですから、私は、会った人とはかならず握手をします。そうすれば、その人のこころがわかるからです。今、この人は元気か、とか、なにか悩みがあるか、とか。握手をするとわかります。」
先日、ある住職さんから聞いた言葉。

いい言葉だなぁ、指の先までこころが通ってる、なんて。
だから、ギタリストがつま弾く音や、ピアニストが奏でる音が、こころにしみるのですね。
だって、直接こころで弾いてるわけだもの。
ETがかつて指と指をふれあったのは、彼も指先までこころが通っていることを知っていたからにちがいありません。おそるべしET。

声はどうなんだろう。
声はまさしく心の叫び。
元気な時、うれしいとき、楽しい時の声と、悲しいとき、悩みのある時、寂しいときの声はあきらかに違うもの。
目の輝きもそうかもしれない。

すべてが心と直結しているのですね。
もしかして人間の体は「こころ」という形のないもので形成されているのかもしれません。

たとえば、だれかの心が弱っているとき、握手をするだけで元気をあげられたらいいのに。
たとえば、だれかの心にぽっかり穴があいてしまった時、声をきくだけでその人のこころが満たされる、そんな歌を歌えるといいのに。

ところで、私の心はどうだったのでしょう。
もしかして少し弱っていたかも。
住職さんは何もおっしゃらず、握手をし、ただにっこりほほえんでくださっただけだったけれど。