ボサノバシンガー 田坂香良子 -KAYOKO TASAKA-

コラム

少し湿ったあたたかい風を感じると、いつもリオを思い出します。
味とか、においなどと同じで、五感で覚えたものは忘れないものなのですね。
そういう風が吹いた瞬間に、リオの街にたたずんでいる感覚に陥ってしまいます。
リオにいたのはもう10年以上も前なのに。
リオは冬でも最低気温が16℃くらいです。
それもたまにしか寒くならないので、ほとんど一年中同じ服装で過ごせます。
昨日コートを着て「寒い!凍える!」って言ってた人が、翌日水着にパラオで海岸に行くっていう生活。
するとどういうことがおこるか・・・

思い出があやふやになってくるのです。
あの人とあの場所に行ったのはいつのことだったかとかが、わからなくなってくるのです。
何かを思い出す時って、その時の情景を頭の中に浮かべますよね?
誰と、どこで、そして周りにはどんなものがあって、そのときどんな服を着ていて・・・って。
そういえば、寒かったなあ、とか暑かったなぁ、とか。
そうすると、なんとなく、あれは何年前の何月頃、ってわかるんだけど、ほとんど一年中同じ服装、気候も同じという環境では、どうも脳が平坦になるようで思い出が時系列的に刻まれないのです。
きっと生まれてずっとリオに住んでる人は、そんなことを思いもしないんでしょうね。
四季のある国で育った私には ちょっと不思議な現象でした。
でもこうやって、風が吹くだけでリオを思い出せるのだから、脳は平坦にはなっていなかったってことですね。
よかったよかった。

これから日本はますます暑くなってきます。
リオを肌で感じる日も多くなりそう。
いよいよボサノバの季節到来ですね!
だからといって、寒くなったらボサノバを歌わないか、というとそうではなく、真冬に「サマーサンバ」なんか歌ったりしています。
「今、リオは夏です・・・」とか言いながら。
要するに、私の頭の中は一年中夏。
ってことは、やっぱり脳が平坦になってるのかな?